シュンデレラ 2話    







 
シュンデレラ 2話









 井宿が杖を振るうと景色が一変する。

「おぉ!これが魔法使いの魔法かぁ〜 俺、初めて体験したわーっ!!!」

 瞬間移動どころか魔法使いなんて今まで自分の世界には無縁であった。

 翼宿たちがいる場所は城下町を目の前にした森の中。

 城下町など、翼宿の住んでいる家から馬車を飛ばしても2時間はかかる。それを一瞬で来たのだからよく子供っぽいと言われる翼宿でなくともはしゃいで不思議はないだろう。

「お前ってほんまに魔法使いなんやったんやなっ!」

「…失礼なのだ」

「そやかて、魔法使いちゅうんを見るんは初めてやけど、お前魔法使いって感じ全然せんし…」

「………君のいう魔法使いというのは、どういう人物をいうのだ?」

「そりゃー、妖しげな紫や緑の液体を前にひゃはっはっはって笑うヤツ!」

「それは絵本の見すぎなのだ…」

 呆れたように軽くため息をつく。

「………でも、井宿さんのお師匠様ならやりかねないですよね」

「…………………ありえなくは、ないような気もするだ…」

「ほんまかっ!」

 魔法使いという自分の知る世界以外の人間に興味はある。

「あの人に手を出すのはやめといたほうがいいのだ…」

「なんや、そんなけったいなヤツなんか?」

 井宿は少しずつ近づきつつあるお城に目を向ける。そして大きなため息を1つ。

「関わらないほうがいいのだ…今日は特に」

「すみません、井宿さん。僕が井宿さんにお願いしたばっかりに…」

「張宿のせいじゃないのだ。それにこれを届けなければ大変なことになるのだ」

「…なんのこっちゃ」

 1人蚊帳の外に出されてはおもしろくないが、なにやら深刻そうな2人に声をかけにくいものがある。

「それにしても、なんやつまらん街やなあ〜」

 自分たちはこのあたりでは1.2をといわれる大通りを通っているのだが、見渡す限り人はいない。

「それは、今日はみなさんお城へ行かれるからに決まってますよ」

「へぇ。そんなにおもしろいとこなんか?」

「キミもお城へ行くのではなかったのだ?」

「そやかて、どうみても井宿や張宿の行くような場所違うやろ?」

 2人は眉を潜め顔を見合す。

 バンッ!バンッ!

 お城のほうで爆発音。

「花火ですね」

「あかんっ!!たまにええとことられてまう!」

 鬼宿に強いやつを倒されてしまったら柳宿に強制的に変わられたとはいえ家事をほってきてまでここまできた意味がない。

「ここまで連れてきてもろておおきになっ」

 それだけ言うと翼宿はお城へと向かって走り出す。

 残された井宿と張宿は再び顔を見合わせる。

「一体、何をしにお城へ行くのでしょうね」

「さあ?それよりもお城で何が行われているか知っているのだ?」







 井宿、張宿と分かれて10分ほど走ると城門にたどり着いた。

「とりあえずは、鬼宿たちを探さんとあかんな」

 鬼宿が行くであろう強いやつが集まるところを知るためには事情を知る人間が必要である。  きょろきょろと歩きながら回りを見渡すと人、人、人の嵐。

 はぁと1つため息をつく。

「どうやって探したらええねん…」

 それでも男の血が騒ぎ立てるようで強いやつと戦うというのは譲れない。

 歩いて回るのでは1日では足りないというくらい広い場所。そんな場所のしかも人だかりの中で人3人探すのは難しい。

 何かが行われる場所には人が集まるという結論に達した翼宿は人が集まる場所へ向かう。

 本来、楽しいことは大好きだしそこそこの人だかりも活気があっていいと思う。しかしこうも人が多いと嫌になってくる。

 都合よく鬼宿たちに声をかけられないだろうか、と他力本願に思ったところに聞き覚えのある声がした。

「……幻狼?」

 振り返り声のした場所を見るとそこにはたこ焼きの出店の主をしている親友の攻児がいた。

「おぉ!攻児!! 久しぶりやんけ!」

 わっと近寄り出店から飛び出した攻児と人だかりの狭いスペースの中2人の再開ダンスを始める。

「お前なにしとんや、こんなとこで」

「おかんに城で出店出してこい言われて弟分手伝わしてここやっとったんや。丁度退屈しとったとこなんや、お前はここで何してんねん」

 退屈というが攻児の店の前にじろりと翼宿を睨んだ客が並んでいる。

 出店の前からは「早くしろ」「何10分待たされているんだ」などという無言のオーラがにじみ出ている。

「お前これからどうするんや?なんやおもしろそうなことあるんやったら付き合うで」

「あるであるで!攻児も一緒に来たらええで!」

「よっしゃ、善は急げや! お前ら俺ちょっと休憩や、しばらく頼むで」

「えっ………あっ。ちょっとあにきぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 あまりにも普通に言う攻児兄貴に弟分たちは一瞬唖然とし叫ぶが時既に遅し、大の男たちの情けない叫び声は人ごみの中にかき消されたのだった。





「人がようけおるけど、今日はここでなにしょんや」

 どうも鬼宿や翼宿のように強い人を求めてやってきた人ばかりではないような気がする。

 すれ違う人を見ていると、格闘とは縁がないであろう着飾った女性たちも少しではない。

「お前ここに何しにきたんや?」

 あきれたようにに言うとあっさりと、強いやつと戦うためと答えが返ってくる。

 攻児にどこで行っているか聞いてみるが知らないという。

 なにせこの規模だ。たこ焼き屋としてここにいる攻児がそこまで細かいことを知っているわけではない。

 しかし一般常識としては人並みにある。

「今日は年に1度のこの城挙げての祭りやねん」

「そうやったんか!お前が店やっとんはおかしいとはおもとったんや!」

 今朝美朱が張り切っていたのは鬼宿の応援だけではなく祭りの食べ物も目的だった、そう考えてやはり一緒に行かなくてよかったと安堵する。

 美朱につき合わされたのでは有り金全部美朱の胃袋の中に入りかねない。

「ここの祭りでかいなぁ〜俺の田舎の祭りもでかいけどここまででかくないで」

「そこなんや、今年の祭りのポイントは」

「なんや、おもろいことでもあるんか!?」

「お前もこの国の国王がええ年なん知っとるやろ?そやから今年後継者になるやつが国王になるんや、今年の祭りは即位式もかねとるんや」

 攻児の指差す先を見ると微かに窓から見える城内はきらきらと華やかな装飾をされている気がする。

「今年の祭りはただの祭りやない。数あるイベントで優勝したやつには午後から行われる即位式を見学できるちゅう話や。もちろん誰でも優勝さえすればええんちゃうらしいけどな」

 よく見ると1部並々ならぬ覇気を感じるものがある。

「そのイベントの中には官吏試験もあるらしいんや、その試験でええ成績を取ったやつは前々女王、前国王、新国王に認められたらその場で採用ちゅうこともあるらしいで」

「へぇ〜」

 自分はその類の話はどうでもいい。頭は悪くはないと思うがどうも勉強というのが性に合わない。

 ふと、今日会った塾仲間だと言った2人組みを思い出し。よくやるなぁと心の奥で思う。

「そうはいうても、即位式なんか興味ないんやけどな」

「そんな行っても堅苦しいだけやしな」

「お!あの店のお好み焼きむっちゃうまいんやで!」

「そういや、ハラ減ってきたなぁ〜」

 朝ご飯はしっかりと食べたのだが、家を出てからは井宿に連れてきてもらった以外は走り通しだった。

「あかん!そんなことしよる暇ないわっ」

 自分がここに来たのは強いやつを戦うため。事情を最も知っているであろう鬼宿たちに会わなければならない。

 しかし、体は正直で。

「ハラ減ったおもたら、ほんまにハラ減ってきた〜」

 よろよろと列の最後尾に並ぼうと動き始めたとき、

「あれー 翼宿じゃない。なんでここにいるの?」

「お前こそ、なんでここにおんねん。たまの応援いかんでえんか?」

「応援?大丈夫だよー 鬼宿はこういうことに関したらマジになっちゃうもん」

 私の手に負えないよという美朱の両手には袋に入ったお好み焼きがある。それも1枚や2枚ではない。

「私お腹空いちゃったからおやつ買いに来たの」

 男衆2人組は”おやつ”と称された袋を見る。

 どうみてもおやつの非ではない。

「そういえば、攻ちゃんを探してたよ」

「俺を…?」

「うん。なんだか慌ててて「お袋さんが来たって攻ちゃんを見たら伝えて」って」

「おい、まさか」

 そういい攻児の顔を見ると傍目からもサーっと青ざめていくのが分かる。

「幻狼、俺戻るわっ 巫女はんおおきになっ!」

「おう。気ぃつけてな…」

 言うや否や走り去る攻児に翼宿の言葉は届いたかどうか…

「あれー?どうしたの攻ちゃん?おしゃべりしたかったのになぁ」

 美朱はのんきに首を傾げるが、翼宿はこれから起こるであろう攻児の身の上に同情する。

 何せ攻児の母親は翼宿の母親と同等に怖いのだ。

「でも攻ちゃん、私のこといつまで”巫女”っていうのかな?バイトしてたのかなり前なんだけどな」

「お前はなんも知らんけんな…」

 美朱の肩にポンと手を置きしみじみとつぶやく。

「なぁ。お前鬼宿のおる場所知っとんやろ?教えてんか?」

「なんだ、翼宿。鬼宿に用事があったんだ。着いてきて」












更新が遅くなり申し訳ありません。

やっと中編更新です。

次回はもう少しシンデレラっぽくなるなると思います……(汗)

いや、シンデレラとは名ばかりの話になってるけど…

それでも王様も出てきます。


2006.07.20




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