猫のようなキミと 3話








 
猫のようなキミと 3話












「そういやあ、この魚お前が釣ったやつなんかぁ〜」

 井宿が魚釣りをしている様子を何度か目撃している翼宿だが1度たりとも魚を釣ったところをみたことはない。

 疑惑のまなざしを井宿に向けていると、井宿は困ったように眉を寄せていた。

「今日釣りはしていないし、たまに魚をあげた覚えもないのだ」

「やっぱなぁ〜」

「もう1ついうなら、このあたりも翼宿に呼ばれる前にいたのは西廊国の砂漠が近い乾燥地帯で川なんてなかったのだ」

 つまり、

「どこかから、持ってきてしまったのだ・・・」

「つーか、お前どこ旅しとんねん!」

「久しぶりに奎宿さんと昴宿さんに会いに行ってきたのだ。お2人ともお元気だったのだ」

「おぉ!あのじじぃとばばぁまだくたばってへんのか!?」

「失礼なのだ」

 たまが魚を食べる様子を楽しそうに見ていた莉鈴だが突然立ち上がりたまを指差した。

「食べたー食べたぁー」

 ぴょんこぴょんこと飛んで食べ終わったことを大人に知らせる。

「おたました」

 井宿は聞きなれない言葉に首を傾げる。

「そういやあ、こいつ何回もそういいよったなぁ」

「何回も?」

「どういう意味や?」

 ふと見ると莉鈴はたまが食べ終わったちょこんと座って手を合わしている。

「もしかして『ごちそうさま』なのだ?」

「はぁ?あれが?『ま』しかあってへんやんか!」

「それはまだ小さいからなのだ。それにしてもまだ小さいのにえらいのだ」

 井宿が頭を撫でるとうれしそうに飛びついた。

「あそおー あそおー」

「何して遊ぶのだ?」

「にゃー」

「お前、骨も食べてもうたんか!?」

 するとたまは右の前足でスッ一点をさした。

 その先には、市のすみにあるごみ置き場だった。

「捨ててきたのだね・・・」

 呆れたように井宿がそう言うと「そうだ」というようにコクリとうなづいた。

「お前、ほんまは猫やのうて井宿の仲間やろ!」

「なんでオイラの仲間なのだ?」

「猫に変身できるやろ」

「確かに、できるのだが・・・莉鈴ちゃんどこ行くのだ?」

 井宿に抱き取られていた莉鈴がもぞもぞと動き出し地面に降りたと思うと一直線に走り出す。

「どこー(意味:どこ行くの?)」

「ニャッ!!」

 ほどよく満腹になったたまが昼寝でもしようと木陰に行こうと歩き出したとこを目ざとく莉鈴が見つけたのだ。

 後ろからの追撃者を見つけたたまは思わず逃げるように走り出す。

 それは悪循環で、逃げたたまをまた莉鈴が追いかけそしてたまがまた逃げる。

 次第にどんどんスピードは上がり見ているだけであった翼宿と井宿も追いかける。

「にゃー!!!!」

「まてまてー」

 いつのまにかたま筆頭に猫、子供、大人2人が一列になって走っている。

 たまたま通りかかった人たちは何事かと首を傾げるがその奇異な光景も長くは続かなかった。

 たまが木に登ってしまったのだ。

 当然小さな莉鈴は登れるわけがない・・・と安易にそう思った翼宿と井宿だったが、

「うー」

 小さな体を器用に使い登ろうとしている。

 やはり見た目どおりの小さな子供。スルスルとすべり落ちてコトンと地面に転がった。

 きょとんと目を丸くした莉鈴だが、登れなかったことを理解したのか頬を膨らませもう1度木を掴み足をかける。

「あ、危ないからやめるのだ!」

 登れるわけがないのは理解しているが、落ちて大きなケガでもしたら大変だ。

「いやー」

「嫌やないわ!お前に木ィ登れるわけないやろうがッ!」

「・・・・・・・・」

「な、なんや・・・」

 じっと大きな目で見られややたじろぐ。

 しかしそれは一瞬のことで、莉鈴はすぐにぷいっと顔を背けて今度は井宿に話しかける。

「あっこ、あっこー」

 抱っこしてもらいたまに触ろうというのだろう。

 随分上に登ってしまったたまとの自分の高さを考え一瞬悩むが、

伸ばされた手を振り払うことは出来ず要望どおりに抱っこする。

「やった!」

 自分目線が高くなったことに満足したまに手を差し出すが当然届かない。

「ねぇこおぉ。おいでおいでー」

「・・・・・」

「ねーこー、ねーこー」

 一息ついて莉鈴を脇に降ろす。

「たま、降りてくるのだ」

 とんでもないとばかりに首を振り更に上に逃げる。

「あー。ねーこー、ねぇこおぉぉ!!!」

「莉鈴ちゃんはたまと遊びたいのだ?」

 突然追いかけてきた莉鈴にたまはおびえていたのだと判断した井宿は莉鈴に聞いてみる。

 普通の猫ならありえないが人間の言葉を理解するたまは聞こえさえすれば幼い莉鈴の言葉も理解できるはずだ。

「ねこ、よしよしぃ」

「よしよし、したいのだ?」

「よしよし、しゅるー」

「聞こえたのだ、たま?」

 少し考えるように首をかしげたがたまは井宿と莉鈴、翼宿を見下ろす。

「降りてくるのだ」

「にゃ!」

 降りようと飛び出そうと身をかがめる。が、しばらくたっても降りてこようとしない。

「どうしたのだ?」

「あいつ・・・怖いんか!?」

 まさか、猫は高いところが得意なのに・・・と思いよく見ていると足がわずかに震えている。

「莉鈴ちゃんから逃げて木に登ったはいいが、怖くなって降りれなくなったのだ・・・」

「ぎゃははは!!!!間抜けなやっちゃなぁ!!」

「たまも翼宿には言われたくないと思っているのだ」

「なんやいうたか・・・」

「別に何も」

 ギロリと睨む翼宿の怖い顔にも井宿にはどこ吹く風でたまに向かい手を差し出す。

「たま、オイラが受け止めるから大丈夫なのだ」

「にゃぁあ」

「しゃあないなぁ」

 しかしそれでも心配な様子のたまを見かねた翼宿は木に登ろうと木に近づいた時たまは飛び出した。

 井宿に腕目掛けて飛んだと思ったのは一瞬のこと。

「いっっっってええええぇぇぇぇ!!!!!!」

 先ほどの暴言をしっかりと聞いていたらしいたまは翼宿目掛けて飛び、しかも着地するには不要の爪を出して

翼宿の背中を思いっきり引っかいて滑り止めにしてくるりと一回転して華麗に着地した。

「何すんじゃぁああ!このくそ猫!!」

「やめるのだ翼宿」

 今にも掴みかからんばかりの翼宿を押さえる。

「おのれもこのくそ猫の飼い主なら躾くらいちゃんとしとけやっ!!!」

「だっ・・・む、無理なのだ」

「やったー!!やったーー!!!」

 ペロペロと体を舐めるたまを満足そうに毛並みに逆らって撫でている。

 少し嫌そうにしながらも追い回していたようなことはしていないからか気にしつつもそのままにしている。

「ねーこ、ねーこ!」

 うれしそうに顔を覗き込んだり撫でたり、たまの周りをぴょんぴょん飛びながら走り回っている。

 忙しそうな莉鈴を1人は優しく、もう1人はふてくされた顔でその様子を見守っていた。









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これもまた、怪獣ネタ。

「おたました」

なぜかご馳走様はこういいます。

あ、でも最近ちょっと言えるようになってきたかなぁ

そして怪獣は実家の猫を追いかけます・・・ここまではしないけど(お互いに分ってるしね)

2007.09.10