クリスマスツリーを飾ろう!







 
クリスマスツリーを飾ろう!








『クリスマスツリーってすっごく綺麗なんだよ』




 その言葉は「さんたさん」という人物を美朱に説明してもらった七星士たちにとって新たなる爆弾だった。



「なぁに、そのくりすますつりーっていうのは?さんたさんっていうのに関係するやつ?」

「そうよ!クリスマスには、もみの木にいろんなものを飾り付けるの!

昔はろうそくを木につけてたらしいんだけど今は・・・・・・・・あ、そうだ!ちょっと待ってて!」

 そういうと美朱はパタパタとどこか走ったかと思う少しして戻ってきた。

「これが去年みんなでクリスマスパーティした時の写真」

 柳宿に写真を手渡すと次々と七星士たちが覗き込む。

「これって前にみんなで撮った絵とおんなじやつだろ!?」

 写真を見て興奮しているのは前回、北甲国へ旅立つときに撮った写真と同じく翼宿と鬼宿。

 しかし他の七星たちも翼宿と鬼宿ほどじゃないにしても食い入るように写真を見つめているのを見て

「絵じゃなくて写真だよ」と小さく訂正してみたが案の定耳には届いていないらしい。

「えっとね、これこれ。これがクリスマスツリー」

 少し興奮が収まったときを見計らい数枚の中から美朱と唯と一緒にクリスマスツリーがある写真を取り出す。

「綺麗っていうよりなんかかわいいわね」

「夜になったら電気をつけ・・・ここが点滅するんだよ。それが綺麗なの」

「これは何を木につけているんですか?」

 張宿が指さしたのはツリーに飾っているプレゼントの箱やぬいぐるみ。

「よくは知らないけど・・・箱とぬいぐるみはサンタさんにお願いするプレゼントだと思うわ。それでこっちがサンタさんの人形」

「こいつが、あのすげぇじじぃかぁ」

 すげぇじじぃとは先ほどのサンタさんの説明でどうやって世界中の子供たちにプレゼントを渡すかというので盛り上がった時に出た全員の感想。

「なんや、強そうやないなぁ」

 珍しく難しい顔をしてデフォルメされたサンタさんの人形を見つめる翼宿の視線は次第に井宿へと移っていく。

「だ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一回この「さんた」つーやつと勝負してみたいわ!!」

 そう言う翼宿の顔はまさしく新しいおもちゃを見つけた子供の顔。

「だ????」

 当然のことながら何故井宿の顔を見てそういう結論になるのか納得できず美朱が問いただそうとしたとき翼宿の口が開いた。

「無害そうな三頭身しくさとっても、やることはえらいやつやっちゅーことやな!!!!」

 三頭身井宿と戦う時の井宿を思い出し、デフォルメしたサンタ人形と美朱の持っていた別の写真のサンタの格好をした奎介を比べたのだろう。

 全員がその結論に達するには少々時間がかかったが、意味が分るとやはり翼宿だ・・・と言わんばかりのため息が漏れた。

「でもねー翼宿、サンタさんと勝負なんて出来ないよー」

 今にも勝負!と言いそうな勢いに美朱がストップをかける。

「なんでや!?」

「えっ・・・うーんと・・・・・・・・・」

 実はほんとのサンタさんは子供たちのお父さんとお母さんです。なんて言ったら夢見る子供のような翼宿はもう一騒ぎするだろう。

「なんでや?」

「・・・・・そうだ!・・・あのね、翼宿。サンタさんってね、戦いが強いんじゃないの。子供たちにこっそりとプレゼントを渡すことしか出来ないんだよ!」

 とっさに出たウソだが我ながら上出来だと思う。

「なんやて!!!!!!!井宿やババアみたいな術使えるんとちゃうんかっ!!!!」

 本気で悔しそうにしている翼宿に、翼宿って絶対にサンタさんを信じる続ける子供だろうなとしみじみ思う。

「ねぇ、折角だからクリスマスツリーってやつ、してみましょうよ!!」

「美朱さんの世界の文化、興味があります」

「じゃあみんなでクリスマスツリーを飾ろう!!!みんなそれぞれ飾るものを持って2時間後にここに集合!」

「さんたってやつに頼むものをこんな風に吊るのか?」

 ぬいぐるみを指差しやけにマジメな鬼宿が問いかけた。

「え?・・・」

「なんでもいいんだよな!!!」

 クリスマスツリーは毎年飾っていたが、飾る物の意味なんて考えたことなかったなと思いつつ適当に「いいんじゃないかな?」と返事をすると突然目を輝かせ始めた。

「まさか、サンタさんにお金を頼むんじゃないでしょうね・・・」

「・・・ぐ・・・・んなわけねぇだろ」

 疑わしい視線が集まる中目を泳がせている鬼宿。

 しばらくしてそれぞれ思うところがあったのか、鬼宿、翼宿、柳宿の3人と美朱が部屋を出て行った。

 前者2名はやけにうれしそうに出て行ったのは、ひとまず置いておくとして。







「どう思います?」

 後に残ったのは頭脳系の張宿、井宿、診宿の3人。

「美朱さんの言葉を疑うというわけではないのですが、なんていうか・・・」

 言いにくそうに言葉を濁す張宿に井宿が言葉を続ける。

「子供にとって都合のいい話なのだ」

 診宿もそうだと言わんばかりに無言で頷く。

「綺麗な装飾、美朱は「ぱーてぇ」と言っていたがあの「しゃしん」というのを見る限り宴会に近いものだったのだ。そして願いを叶える「さんた」の存在」

「美朱の世界の食べ物は分らんが、あれを普段の食事とは考えにくい。あれは恐らく複数で取り合って食べるものだ」

 診宿の言う「あれ」とはテーブルの真ん中に置いていた鳥の丸焼き。

「その横にあった白い円形の食べ物。あれは美朱さんの持っていた書物にあった「けーき」というものだと思います」

「確かその「けーき」というのは「あいす」や「くれーぷ」とかいうのと同じ甘い食べ物だと言っていたのだ」

 美朱が「甘くておいしいお菓子作ったの!」と称するブツの処理に大騒動になったのは記憶に新しい。

「「さんたさん」というのは・・・」

「オイラ大極山で3年間修行したのだが、世界中の子供たちにプレゼントをするというのはどう考えても無理なのだ。

そういうことが出来るのは太一君や四神・・・人外の力だと思うのだが」

「やはり「さんたさん」というのは太一君と同等の力を持つものか、存在しないということでしょうか」

 そこで軽く息をつき真面目な顔から一変し、いつものにこにこ顔に戻る。

「むしろ御伽噺が現実化し、それを子供たちが信じている。そう考えたほうが自然なのだ〜」

「贈り物というのも恐らく両親やそれに近い者からのものだろうな」

「では「さんたさん」というのは・・・」

「恐らく存在しないのだ。第一、子供が欲しいものを1番知っているのは両親なのだ」

「・・・そう考えると、美朱の住む世界というのは裕福なのだな」

 特に祝い事でもあるわけでもない日に「ぱーてぇ」というものをして、親から子供へのプレゼント。

 紅南国の一般庶民は食べ物や着るもの、生活に困ることはないもののそれほどゆとりがあるわけでもない。

「でも、そういうのっていいですよね。僕も父様が僕のために買ってくれたお土産は忘れられません」

 まだ子供の張宿には少し夢のない話だったかもしれないが屈託なく微笑む張宿を見て大人2人は思わずほころんだ。





「皆さんは、何にするか決めましたか?」

 問いかけているのは当然クリスマスツリーの飾り物。

「特に決まりがなさそうな感じだったから、なんでもいいんじゃないのか?」

「張宿には何か欲しいものとかないのだ?」

「えっ・・・」

 思い当たるものがあったのか、少しうつむいてもじもじする張宿は年相応の少年の顔。

「張宿の欲しいものを形にして「くりすますつりー」に飾ると、もしかしたら叶うかもしれないのだ」

 その言葉を聞いて、でも!と声を出そうとして出せなかった。

「張宿はよい子なのだ」

 小さな子供のように頭を優しく撫でてくれた。

「こ、子ども扱いしないでくださいっ!」

 思わず照れて声を荒らげてしまったが井宿はまったく気にしていない様で

「考えおくのだ」

 そう言って部屋を出て行った。













「ちょーっとそこ空けて頂戴」

 自分の身長ほどの大きな木を持つ柳宿が入り口で立っていた。

「なんや、それ」

「これに飾りつけるんだよー」

 後ろからひょこっと顔を出した美朱が柳宿の変わりに答える。

「みんなは何持ってきたの?」

 言いながら見せたのは白くて柔らかそうな布。

「私はね、これ。これを枝に乗せて雪を表現するの」

 ほんとは綿がよかったんだけどね、と苦笑しながら付け加える。

「私はね、これよ!」

「うわあ!!これ、柳宿が作ったの?」

 手のひらサイズのサンタのぬいぐるみを目の高さまで持ってきて前後ろといろんな方向から眺める。

「やっぱり「さんたさん」っているんでしょ」

「柳宿さん、すごいです」

「んで、その後ろ手に持っとんはなんやねん」

「あは。ばれた?」

 少し頬を染めて出したのは同じくらいの大きさの星宿と柳宿のぬいぐるみ。

「すごいすごい、そっくりだよ柳宿!」

「なんでお前と星宿様の形してんだよ・・・」

 やや呆れた声を出したのは鬼宿。

「だってぇ・・・」

 ちらりと星宿の顔を見て恥ずかしそうに目を逸らす。

「飾ったものを・・・プレゼントしてくれるんでしょ」

 言わせないでよと真っ赤な顔をして手で顔を覆う。対し、星宿はどうしていのか分らないのか柳宿から極力目をあわせないようにしている。

 そして残りの七星と美朱はやっぱり・・・と呆れている。

「ケケケ・・・男同士で何するっていうんじゃあ」

 直後、ドカンッ!という大きな音と共に翼宿が吹っ飛んでいった。

「フン!」

「言わなきゃいいのだ・・・」



「美朱、これでいいんだよな!」

 翼宿の暴言など目もくれず美朱が持ってきた飾りを率先して飾りつけしている。

「あ!鬼宿・・・・・・って何してんの?」

 いつの間にかそれなりの量を持ってきた美朱の飾り物のほとんどを飾っているのだがとある一部に意図的にあけられたような空間があった。

 そしてその真ん中には「見て下さい!」と言わんばかりに堂々と一枚の紙が飾られていた。

「あーーーーーーーー!!!!それって、こないだ食べた肉まん屋のタダ券!!!」

「「さんた」ってやつよ、なんかくれるんだろ?これだったら今度美朱と食いに行ったとき使えるだろ!」

 つまりはよく目立つ場所に置いて、タダ券をたくさん貰って自分のお金を使わず美朱の胃袋を満足させようという魂胆だろう。

「あ、あれ?」

「あのね、サンタさんにはそういうの頼むんじゃないよ!」

 一瞬呆れたもののこれが鬼宿だと諦めた。

「あんた、夢ないわよねぇ」

 柳宿にしみじみと言われ「柳宿には言われたくない」と思ったが翼宿の二の舞になると口を閉ざす。

「って翼宿、てめえ何してんだよっ!!そこは俺の作った場所なんだよ!!」

 ちゃっかりと自分の欲しいものを書いたと思われる紙を鬼宿のタダ券に並べていた。

「別にええやないか、減るもんじゃないんやし。ケチなやっちゃな」

「減ったんだよ!美朱のために頼んだ肉まんを飾った貴重な場所が!!!」

「「さんた」つーやつが見ればそれでええんやろ、そやったら関係ないやないか」

「そうじゃなくて・・・」

「で、あんた何書いたの?」

 そう言って翼宿の願いを書いた紙を見た柳宿が誰の目にも分るくらいに崩れた。

 それを見た他の七星たちは柳宿の持った紙を覗き込む。

「ばっかじゃないの、あんた」

 誰もが思った感想を代表して柳宿が言う。

「え??何何????」

 1人この国の字が読めない美朱が柳宿に聞くと、

「「メッチャ強いやつと、戦いたい」ですって」

 一瞬きょとんとなった美朱だが翼宿らしいと笑い出した。

「でも、なんかクリスマスっていうより七夕みたいになっちゃったよなー」






 なんだかんだとドタバタしながらも、元々それほど多くはない飾り物もほどなく済もうとしていた。

「でーきた!! ちょっと七夕みたいになっちゃったけど、結構うまくできたかも!!」

 満足そうにクリスマスツリーを見上げる美朱の横で七星士たちも異世界の文化に目を細める。

「あれ?そういえば張宿は何か飾った?」

「いえ・・・あの・・・・・・」

 恥ずかしそうにもじもじしている張宿の後ろの机の上の隅に置いてある紙の人形のようなもの翼宿が発見する。

「なんや、これ?」

「えっと・・・この間美朱さんに鳥の作り方を教わったので・・・・・・やっぱり僕たちの願いは朱雀を呼び出すことだと思ったので・・・」

 実は、鶴という鳥の種類なんですけど・・・と小さく付け加えた。

 張宿がオドオドしているのは慣れない折り紙と薄い紙のせいで少しよれよれになっているのと、

少し前に星宿が宮殿内に飾ってあったとても一般庶民には買えない立派な四神の置物をツリーに飾ったのを気にしているのだろう。

「そうだよな、俺たちの1番の役目は朱雀を呼び出して国を救うことだからな!」

 大人たちが感心して張宿の折った鶴を見つめる。

「あの、うまくできなかったのであまり見ないでください」

 頬をわずかに染めて訴える張宿に苦笑して、柳宿の人形と鬼宿と翼宿の願いの書かれた紙を見て井宿は言った。

「まだ子供の張宿は七星士として考えているのに、大人たちは煩悩のままなのだ」

 さすがにこの言葉にはぐうの音も出なかった。



 後は飾ったろうそくに火をともすだけ。

「ちゃんとろうそくだけ狙うのよ!」

「木、燃やしちゃダメだからね!」

「俺を誰うやと思てんねん、ちゃーんとろうそくだけ火ぃつけたるけん見とき!」

 振り下ろした鉄扇の向こうでツリーに小さくて暖かな火がともった。

 夜になると、その幻想的な光景に七星だけでなく宮殿の役人たちも仕事の手を止めて息をのんで目を奪われた。

















 が!

「水っ水っ!!!」

「もぉ!なんでツリーが燃えちゃうのよおぉぉぉ」

「お前が肉まんのタダ券なんか飾るけんさっきの強風に火ぃが燃えうつったんや!責任とれや!!!!」

「お前の妙な願い事の紙が燃えたんじゃねぇのか」

「あんたたち、遊んでないで火を消すの手伝いなさいっ!!!!!」








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で、できた・・・なんとかイブにUPです(日付は過ぎてる・・・)

密かに去年のサンタネタをUPしたときに来年続きを書いてやろうとたくらんでいました(笑)

とはいうものの、ほんとはプレゼント編の予定だったのですが、それはまた来年に持ち越し(ほんとに?)

でもほんと、クリスマス中にUPできてよかった・・・


何気につながってるのでよかったら「さんたさん」ってどんな人?も見てください。

2007.12.24