早朝のまだ静な宮殿に突如雄叫びともいえる叫び声が響き渡った。
何事かと仲間たちは雄叫びの聞こえた部屋へと急ぐ。
「何1人で騒いでんのよっ!!」
「お前、一体何時だと思ってんだよっ!」
「どうかしたんですか・・・?」
眠そうに目をこすりながら訊ねた張宿は翼宿が震える手で持っている包み紙を見て思わず目を見張る。
・・・あれは、
まさかと思い軫宿と井宿を横目で見ると井宿と目が合った。 内緒なのだーと小さな声が聞こえた。
そう言う井宿の目はいつもの細い目と変わりはないがどこか楽しそうに翼宿を見ている。
「ぅわぁ、すごい翼宿!!翼宿にもサンタさん来たんだね!!」
「やっぱ、これ・・・さんたのやつの仕業か!!!」
「あんた、さんたさんっていうの捕まえるって昨日張り切っていたじゃない」
というのも昨日の夕食時に「明日はね。こっちの世界でクリスマスなんだよ!良い子のところには明日の朝サンタさんがプレゼントを持ってくるよ!」と言っていたのを聞いた翼宿が「そんなん俺が捕まえたる」と言っていたのだ。
「失敗したんじゃないの・・・」
「そ、そんなん言うたかて、ずっと寝んと気ぃ張っとったんやで!山賊の頭の俺が見逃すわけないわっ!!!」
実際朱雀七星の中で見張りをやらせたら気配を読むことに得ている井宿の次にうまい。
「さんたのやつは、俺が気ぃ抜くまで見張っとったんか!?」
信じられへんという翼宿にバレないように井宿の顔を盗み見ると困ったように苦笑していた。
井宿さんも大変だったんだと思い、小さく「お疲れ様でした」という。
「というか、山賊のあんたが『良い子』なんだぁ」
「アホいうなや!俺以上に『よい子』がどこにおるっちゅんじゃ!」
そういうと仲間たちはスッと張宿を指差す。
「えっ!?」
「確かに、張宿はええ子や!!そしてこの俺も張宿に負けず劣らずのええ子や!!」
思わぬ展開に慌てる。
僕は皆さんが思っているようなよい子なんかじゃないですよ・・・
「張宿は良い子だけど、お前は良い子じゃねえって!ガラ悪ぃしよ」
「おのれだけには言われとうないわ!操られとったちゅーても、仲間を半殺しにしよってから!お前こそさんたのやつからぷれぜんともらったんか!?
「う”・・・それは・・・」
「ほら、見てみぃ!俺のほうが良い子や!!!」
慌てながらも二人の言い合いを見ていた張宿は思う。
このままではどんどんエスカレートしてしまいます。
「あっ。あの・・・翼宿さんも、鬼宿さんも良い子です!」
その瞬間言い合いがとまり静まり返る。
何かいけないことでも言ってしまったんだろうか。
「あんたたちね、一番小さい張宿に『良い子』って言われてどうするのよ」
「すっすみません!!!!」
思わず謝った。
だって、皆さんよりもずっと小さくて何もお役に立てていない僕に『良い子』なんて思われたら翼宿さんも鬼宿さんもどう思うんでしょう。
「すみません。僕なんかがそんなことを!だって皆さん僕よりもずっと強くて大人で、すばらしい方ですから!僕なんかがそんな・・・」
張宿のそんな健気な姿を見て言葉を失う。
「悪かったな・・・」
「俺も、大人げなかったわ・・・」
「そういえば、さんたさんというのは「良い子の子供」のところに来るのではなかったのだ?」
張宿の頑張りで静まっていたその場にわざわざ爆弾を落とす最年長、井宿。
「だっ、誰が子供やねんっ!!!!」
その言葉を聞いて黙ってはおけない翼宿、そして鬼宿柳宿。
辺りは再び騒然となる。
「井宿さん・・・」
せっかく丸く収まっていたのにどうして?と顔に書いている張宿に近寄る。
楽しそうに笑いながら、どこから取り出したのか小さな包み紙を張宿に差し出す。
「井宿さん?」
「オイラと軫宿からの、くりすますぷれぜんと、なのだ!」
「・・・・・・でも・・・」
「張宿はよく頑張っているのだ。まだ12歳だというのに大人に中に入るというのは大変なのだ」
「井宿さん・・・」
それはまだ子供だと言われているようで。
皆のように一人前の朱雀七星として胸を張りたい。そう願う張宿を否定するもので。
けれど「まだ子供でいいんだ」と言ってくれていて、どこかほっとして、うれしかった。
「軫宿さん・・・?」
不安そうに軫宿の顔を見ると、無言で頷いてくれた。
戸惑いがちに手を伸ばし、受け取った。
「ありがとう、ございます」
そうお礼をいうと、井宿さんが頭をゆっくりと撫でてくれた。
とても暖かかったです。